基礎疾患がある方は、肺炎リスクにも備えを

日常生活でかかる肺炎の主要な原因菌の一つは肺炎球菌です。

「肺炎予防は65歳から」。そんなふうに思っている方はいませんか? 実は基礎疾患があると、20〜50代でも肺炎にかかりやすくなります。
「脳梗塞」「心疾患」「糖尿病」「慢性腎臓病」「慢性肺疾患・COPD・気管支ぜんそく」「慢性肝疾患」「リウマチ・自己免疫疾患・免疫不全・機能低下」。これらの持病をお持ちの方は、肺炎リスクにも備えたほうが安心です。
そのほか、病気の治療中で免疫力が低下している方、脾臓を摘出された方、たばこを吸っている方など、肺炎にかかりやすいケースはいくつかあります。心当たりのある方は、医師に相談してみてください。

基礎疾患リスト

*1 Shea, K. M. et al.:Open Forum Infect Dis 1(1):ofu024
“2014(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4324183/ 2021/3/31参照)より作図”
*2 Nakagawa, T. et al.:J Intern Med 247(2):255, 2000(本出典論文は特定の医療機関の研究成果である)

持病があると、肺炎にかかりやすくなります。

日本人の死因は、「悪性新生物(腫瘍)」「心疾患(高血圧性を除く)」「老衰」「脳血管疾患」に続く第5位が、「肺炎」。1)ときに重症化し、命にかかわることもある病気なので、油断大敵です。
ひとくちに肺炎といっても、原因となる細菌の種類はさまざまですが、もっとも多いのが「肺炎球菌」。
日常生活のなかで発症する肺炎(市中肺炎)の20%近くが、肺炎球菌によるものです。

成人肺炎診療ガイドライン2017 各論1 市中肺炎

1)厚生労働省:令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/dl/gaikyouR4.pdf 2023/11/06参照

監修 国立大学法人長崎大学 学長 河野 茂 先生

心配なのは、インフルエンザからの肺炎です

二次感染に気をつけて。インフルエンザがきっかけで起こる肺炎

インフルエンザによって免疫力や抵抗力が弱まると、肺炎にかかりやすくなることをご存じですか?2)
そうしてかかった肺炎は、重症化する恐れがあります。また、インフルエンザによって引き起こされた肺炎の原因菌を調べてみると、そのうちの40%は「肺炎球菌」が原因であることがわかりました。2)
インフルエンザが流行する冬の時期は、インフルエンザに加えて肺炎球菌による肺炎にも注意が必要です。

2)川上 和義:日本内科学会雑誌 98(9):291, 2009

細菌性肺炎合併の場合の菌種別重症インフルエンザ症例数(2019-2020年シーズン)

あなたの身近に潜む、肺炎球菌感染症

感染リスクが高い人は、「①乳幼児」「②65歳以上の高齢者」「③基礎疾患のある方」

肺炎球菌は、肺炎の原因となる主な細菌。「莢膜(きょうまく)」という膜で覆われた肺炎球菌は鼻やノドの奥につきやすく、これによって引き起こされる肺炎を「肺炎球菌感染症」といいます。
ほかにもこの肺炎球菌は、脳や髄膜に入り込むと「髄膜炎」を、耳に入って感染すると「中耳炎」を発症します。

肺炎球菌は、脳や髄膜に入り込むと「髄膜炎」を、耳に入って感染すると「中耳炎」を発症

肺炎球菌は健康で体力のある状態ならば、十分な免疫力があることから感染症を引き起こすことはあまりありません。しかし、5歳未満の乳幼児や65歳以上の高齢者、基礎疾患を抱える方は、感染しやすくなります。3-5)
●免疫機能が未発達な5歳未満(特に2歳未満)の乳幼児
●免疫機能が低下し始める65歳以上の高齢者
●糖尿病・心疾患・呼吸器疾患などの基礎疾患を抱える方
ある人の鼻やノドの奥についた肺炎球菌は、咳やくしゃみ、会話などの飛沫感染によって周囲にうつります。ご自身が感染すると、ご家族など周りの人にも広がりかねないので要注意です。

飛沫感染でうつる 65歳以上免疫機能が低下 肺炎球菌による感染症にかかりやすくなる飛沫感染でうつる 65歳以上免疫機能が低下 肺炎球菌による感染症にかかりやすくなる

3)厚生労働省:肺炎球菌コンジュゲートワクチン(小児用)Q&A <医療従事者用> https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou/pdf/110228-1.pdf 2023/11/06参照
4)国立感染症研究所:成人侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)症例の臨床像の特徴と原因菌の血清型分布の解析 https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2432-iasr/related-articles/related-articles-461/8168-461r05.html 2023/11/06参照
5)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討委員会/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会:「6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方」第2版(2023年9月11日)
https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/file/6-64haienkyukinwakuchin_virsion2_20230912.pdf 2023/11/06参照

監修 国立がん研究センター 中央病院感染症部 感染制御室 岩田 敏 先生

あなたの身近に潜む、肺炎球菌感染症

肺炎球菌感染症の主な症状は、せき、発熱、たんなど。一見かぜの症状と似ているため、「肺炎はかぜをこじらせたもの」と考えがちですが、二つはまったく異なる病気です。

息切れ、黄色から緑色・鉄さび色のたん、38度以上の高熱などの症状が長く続いたら、肺炎球菌感染症のサインかもしれません。6)また、息が浅くなる、呼吸が速くなる、ぐったりする、食欲がないといったわかりづらい症状に見舞われることも。6)肺炎だと気づかぬまま悪化させることがないよう、注意したいところです。

かぜと肺炎の症状・熱・期間の違い

肺炎球菌感染症のなかには発症後、急速に重症化するケースのほか、発症によって体力が低下し、その結果、何度も肺炎にかかってしまうケースも。また肺炎が治っても、肺が元通りにならないこともあります。肺炎球菌感染症のさまざまな危険、しっかり認識しておきたいですね。

6)公益財団法人長寿科学振興財団:健康長寿ネット 肺炎の症状
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/haien/shoujou.html 2023/11/06参照

監修 国立大学法人長崎大学 学長 河野 茂 先生

大切な健康を守るために。“肺炎球菌ワクチン”という選択肢

私たちの身近に潜む、肺炎球菌感染症のリスク。肺炎予防のためにできることのひとつが、「肺炎球菌ワクチン」の予防接種です。ワクチンを接種することで肺炎球菌感染症への免疫がつくられ、たとえ病原体が体内に侵入しても、発症を予防したり、軽い症状で済ませたりすることが可能です。
※肺炎球菌ワクチンの接種は、すべての肺炎を防ぐものではありません。

長らく肺炎球菌ワクチンは、乳幼児と65歳以上の高齢者が対象でしたが、現在は基礎疾患を持つ6〜64歳のみなさんにも推奨されています。あなたの大切な健康と暮らしを守るために。肺炎球菌感染症は、ワクチンで予防しましょう。

自然感染の場合

ワクチンを接種することで肺炎球菌感染症への免疫がつくられ、たとえ病原体が体内に侵入しても、発症を予防したり、軽い症状で済ませたりすることが可能

ワクチン接種の場合

ワクチンを接種することで肺炎球菌感染症への免疫がつくられ、たとえ病原体が体内に侵入しても、発症を予防したり、軽い症状で済ませたりすることが可能

監修 川崎医療福祉大学 医療福祉学部 子ども医療福祉学科 特任教授 尾内 一信 先生

ワクチンのこと、お医者さんにどう相談すればいい?

「肺炎球菌ワクチン、私も早速打ってみよう」。そう思った方は、お近くの病院に尋ねてみてください。ここでは、お医者さんに相談するときのガイドをご紹介します。

  • Q1. ワクチンを打ちたいけれど、まず何からはじめればいい?

    A. 医師に「接種歴があるかどうか」「接種歴があるなら、いつごろ接種したか」をお伝えください。その内容から、ワクチン接種の必要性やタイミングを説明してもらえます。

  • Q2. 他の病気で受診したときに、一緒に相談してもいい?

    A.もちろん構いません。特に呼吸器疾患や循環器疾患、糖尿病などの持病がある方は、健康な方よりも肺炎にかかるリスクが高くなります。いつでも医師に聞いてみてください。

  • Q3. 医師が忙しそうで、ワクチンのこと、聞きづらいです…。

    A. 病院が混んでいたり、医師が忙しそうなときには、看護師やスタッフに相談してみてください。相談内容をうまく伝えられないときは、お持ちの「ワクチン接種カード」や病院内にある「ワクチン相談カード」を使うとよいでしょう。

肺炎球菌ワクチンについて、もっと知りたいと思ったら。
かかりつけ医やお近くの医療機関に
気軽に相談してみてください。

まずは、肺炎球菌ワクチンのこと
相談しませんか。

監修 慶應義塾大学医学部 感染症学教室 教授 長谷川 直樹 先生

2023年12月作成 PRV45N021A

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