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加齢による嚥下機能の低下も、肺炎のリスクのひとつです

高齢者の肺炎で「誤嚥性肺炎」はよく聞く言葉だと思います。寝たきりの方や介護を受けられる方に多い肺炎と思われがちですが、健康な方でも、加齢による嚥下機能の低下により、肺炎にかかるリスクは高くなります。ここでは嚥下機能の低下と肺炎の関係についてお話します。

誤嚥により細菌が肺に入り込む

飲食物や唾液などを飲み込む動作を「嚥下(えんげ)」と言います。高齢になるとこの嚥下の機能が低下して、本来なら食道から胃へと送られるものが誤って気道の一部である気管に入ってしまうことがあります。これが「誤嚥(ごえん)」です。このとき、唾液や胃液とともに細菌が肺に入り込んでしまうことによって引き起こされるのを「誤嚥性肺炎」といい、65歳以上の方がかかりやすい肺炎のひとつです。誤って気道に入りそうになった時に、咳反射で排出する力が弱ってくることも、誤嚥を招き細菌が肺に入り込む原因のひとつです。

誤嚥により細菌が肺に入り込む

年代別入院肺炎症例における
誤嚥性肺炎の割合

グラフ:年代別入院肺炎症例における誤嚥性肺炎の割合 グラフ:年代別入院肺炎症例における誤嚥性肺炎の割合
対象:
2004年4月~2005年4月の間に国内の異なる地域の計22の病院に入院した,市中肺炎患者と院内肺炎患者589例≪2~101歳[主に72.6±8.2歳 (平均値±標準偏差)/64~89歳,男性377例・女性212例]≫
方法:
肺炎全体のうちの誤嚥性肺炎の発症率を年齢別に,前向きに検討した。誤嚥性肺炎の診断は,嚥下機能テスト[水飲みテスト,反復唾液嚥下テスト,簡易嚥下誘発試験,嚥下誘発テスト(SPT)]にて評価し行った。

©the Wiley publication
Teramoto, S. et al.:J Am Geriatr Soc 56:577, 2008
(本研究は,データ収集および解析において,ファイザー社の支援を受けた)

60代以降になると入院をともなう肺炎の50%以上が誤嚥性肺炎であるといわれています。また、この誤嚥性肺炎は加齢とともに増加していきます。

眠っている間の誤嚥に注意

ではどんな時に、誤嚥を招いてしまうのでしょう。
例えば食事のとき、飲食物などが気道に入ればむせてしまいます。これは本人や周囲の人も気づく「顕性誤嚥」と呼ばれます。しかし、気づかないうちに気道に入ってしまう「不顕性誤嚥」には注意が必要です。なぜならば、食事のときは問題なく飲み込めていても、眠っているときなど、知らない間に鼻、のど、口腔内の分泌物の誤嚥を繰り返していることがあるからです。加齢とともに喉頭の位置が下がり飲み込む力が弱まったり、異物に対する上気道の反射(せきやくしゃみなど)が弱まったり、あるいは睡眠薬や鎮痛薬、向精神薬などの使用で嚥下反射の機能が低下することによって不顕性誤嚥が生じます。介護状態で寝たきりの方などはもちろん注意が必要ですが、普段健康に過ごしている方でも、嚥下障害を持っている可能性があるため、誤嚥への対策をとることが大切です。

誤嚥性肺炎を予防するには

誤嚥性肺炎を予防するには

睡眠中の誤嚥によって発症する肺炎を予防する最も簡単な方法は、睡眠時に頭の位置を少し上げておくことです。下あごの位置を嚥下しやすくすることにより不用意な誤嚥は避けられます。角度を変えられるベッドがない場合でもクッションなどで代用が可能で、10~30度くらいの角度を保つようにしてお休みになると安心です。このほか、嚥下機能は使わないと退化してしまうので意識し訓練することが大切ですが、日常生活の中で声を出して意識的に会話することも嚥下機能の回復となります。
また適度な湿度や温度が保たれている口の中は、肺炎の原因となる細菌が繁殖しやすいため、口腔内を常に清潔に保つことが大切です。それにより、誤嚥の際の細菌を身体に取り込んでしまう量を減らすことが可能です。その他、感染を助長する脱水への対策なども重要です。

誤嚥性肺炎は、私たちが知る肺炎とは起因菌もかかる人も違う、という感覚があるかもしれませんが、健康な方でもかかる可能性のある、肺炎球菌感染症のひとつです。
低下する嚥下機能のケアや口腔ケアなど、日常生活での予防に加え、肺炎球菌ワクチンの接種も、大切な予防対策のひとつと言えます。

監修東京医科大学八王子医療センター
呼吸器内科 教授 寺本 信嗣 先生

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