肺炎で健康寿命を損なうことも

肺炎といわれても、あまり重い病気という印象はないかもしれません。確かに今、肺炎は薬で治せることも少なくないですが、肺炎とは、気道の奥にある気管支のさらに奥にある肺胞で炎症がおきた状態で、大変苦しい病気です。顔がほてっている、咳が多い、痰が多い、大きな息をしているなどの症状がみられます。また、活気がない、食欲がない、普段と比べて少し元気がないなど気づきにくい症状もあるためかぜをこじらせたものと思いこみ、肺炎と知らずに悪化させてしまうこともあるのです。ご本人だけでなく、周りやご家族の方などがこれらのサインに気づくことがとても重要です。

また、肺炎にかかり体力が奪われることで、ふたたび肺炎にかかりやすい状態になります。肺炎は、実際に何度も繰り返すうちに全身が弱ってしまうことがあり、健康寿命を損なうことにもつながります。いまの健康を維持して健康寿命をのばすため、また、人にうつさないよう、うつされないようにするためにも、肺炎はまず予防すべき病気、と捉えていただければと思います。

日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017作成委員会:成人肺炎診療ガイドライン2017 第1版 日本呼吸器学会:4, 2017

悪循環

大切なのは予防すること

いくら元気なつもりでいても、65歳を過ぎたら健康維持へのしっかりした自覚を持つ必要があります。見た目は健康そうでも、加齢とともに免疫力は低下するので、普通の生活を送っていても、肺炎球菌などの細菌やウイルスによる感染症にかかりやすくなります。さらに、糖尿病や心疾患、呼吸器疾患、腎不全などの慢性疾患をお持ちの方、病気の治療中で免疫力が低下している方、たばこを吸っている方も感染症にかかりやすくなることがわかっていますので十分な注意が必要です。

そして肺炎球菌による肺炎は、せきやクシャミなどで人から人へうつるため、かかってしまった場合のリスクはご自身の問題だけではおさまりません。同年代の配偶者や友人だけでなく、まだ免疫が発達しきっていない乳幼児にもうつってしまう可能性があります。また治療費用の面でも、ご自身だけでなくご家族にも経済的な負担をかけてしまうことも考えられます。何よりも心配事がひとつ減ることは、精神面でも健康的なことなのです。

元気なうちから、未来の健康のために「できることは、やっておく」、そのひとつとして大人の「予防接種」をお考えください。

監修 関西医科大学附属病院 呼吸器感染症・アレルギー科 教授 宮下 修行 先生

2023年12月作成 PRV45N021A